【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉


 それからしばらく進んでいくと、二人はいつしか周囲の景色が変わっていることに気が付いた。

「……ここって」

 自分たちが今いるであろう場所に予想をつけた二人は、思わず息をのむ。
 通りは薄暗く街灯一本存在しない。頼りになるのは家々から漏れ出るわずかな灯りのみだ。
 けれどそれだって、非常に弱々しく足元を照らすには不十分である。なぜなら灯りの()いている家自体が少ないからだ。ほとんどの家は、まるで誰も住んでいないかのようにひっそりと静まり返っている。

 ――そこは貧民街だった。

「アメリア……何かここ、ヤバくないか?」
「君、ここに友人でもいるの?」

 二人はアメリアに尋ねる――が、返事はない。
 けれどその代わりとでも言うように、彼女は一軒の家の前で立ち止まり、迷うことなく扉を叩いた。

「ミリアよ。入れてくれる?」

 彼女がそう声をかければ、扉がわずかばかり隙間を空ける。そこから顔を覗かせたのは、十歳ほどの少年だった。

「こんばんは、ニック」
「…………」

 少年はそれが確かにアメリアであることを確認すると、ほっと表情を緩めた。
 けれどすぐにエドワードとブライアンの存在に気付いたようで、緊張に顔を強張(こわば)らせる。

「……その人たちは?」
「わたしの友人よ」
「友人……?」
「そう。悪い人じゃないから大丈夫よ、安心して」
「…………」

 アメリアが微笑むと、少年はようやく警戒心を解き、三人を中へと招き入れた。
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