【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
彼女は二人の問いをひたすらに無視し、数枚の銅貨を少年に手渡す。
「これで足りるわね。あ、帽子も忘れちゃダメよ?」
少年は銅貨を数え終えると、満足げに顔を上げた。
「任せてください! すぐ用意しますね!」
彼はそう言って、駆け足で家から出ていく。
その足音が聞こえなくなってようやく、アメリアは二人の方を振り向いた。
「出掛けるわよ、二人とも」
アメリアはニコリと微笑む。――が、当然二人は困惑顔だ。
「出掛けるって、いったいどこに……。俺たち今も外出の真っ最中だと思うんだけど……」
「それに今の子供……君とどういう関係だ? そもそも親は? こんな時間に子供が家に一人ってあり得ないだろ!」
「それにミリアって何だよ。なんで偽名?」
二人は口々に問いかける。
するとアメリアは一層笑みを深くした。
「まだまだ夜は長いのよ。この姿じゃ目立つでしょ」
「…………」
二人は再び顔を見合わせる。
「まったく。君はいったいどんな教育を受けてきたんだ」
「君の家族はこのこと知ってる……わけないか。普通なら許さない」
「あら。ここに付いてきたという時点で、あなた方もわたくしと同じですわ。それに心配せずとも散会までには戻ります。それとも、怖気付きまして?」
アメリアの笑みに、二人は観念したように息を吐いた。
彼らも男だ。そこまで言われて引くわけにはいかない。
「いや、ここまで来たら最後まで付き合うさ」
「ああ、なんなら夜更けまででも――女王様」