【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉

 エールは初めての彼らであるが、酒自体は寄宿学校(パブリックスクール)に入った頃から(たしな)んでいた。と言っても、当時の彼らにワインの味の違いなどわかるはずもなかったが――。
 そうやってしばらく談笑していると、バーマンに酒を注文しに来たのだろう。アメリアの横に一人の男が現れた。

 ハンチングを被り口髭を生やした四十歳(しじゅう)頃のその男は――連れの分だろう――エールを四杯注文する。そして何気なくアメリアの方に視線を向けたと思ったら――アメリアの容姿に目を引かれたのだろうか――大きく目を見開いた。

「見ない顔だな? 姉ちゃん、ここは初めてか?」

 男は至って自然な態度でアメリアに問いかける。
 するとアメリアはまるでそれを待っていたかのように、ニコリと微笑んだ。

「ええ。先月から近くのお屋敷で働いてるの」
「へぇ。ならそっちの二人は仕事仲間か」
「そうよ。わたしはローザ。こっちの二人はエドワードとブライアンよ。あなたは?」
「俺はジョンだ。――にしても姉ちゃんえらく垢抜けてるな。お屋敷勤めって奴は少なくねェが、姉ちゃんみたいなのそうそう見ねェぞ」

 口髭男――もといジョンは、どこか値踏みするようにアメリアを見つめ、そして今度はエドワードとブライアンにまで観察するような目を向ける。

「よく見りゃそっちの兄ちゃんらも男前だな。――貴族って言われた方がしっくりくるぜ」
「――っ」

 ジョンの言葉に、エドワードとブライアンはぎょっとして顔を強張らせた。
 けれどアメリアは、むしろそれを肯定するかのように――テーブルに頬杖をつき、二人をからかうように横目で流し見て――ふふっと笑い声を上げる。
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