【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
「さっきの続き……パブに定期的に出入りするようになって常連になると、彼女……アメリアは少しずつ噂を流すようになったんだ」
「……噂?」
「そうさ。彼女の扮するメイド、ローザはサウスウェル家にメイドとして仕えてることになってただろ? 彼女はメイドのローザになりきって、本来の自分自身……つまりアメリアについての悪い噂を流し始めたんだ。――アメリアに虐められてるってな」
「二ヶ月、三ヶ月……時が過ぎるにつれ、彼女はやつれた風を装うようになった。口数を減らし、ふさぎ込むような態度をとるようになった。パブの皆はそんな彼女を心配していた。その間に、本来の彼女――アメリアの悪評は社交界にまで広がっていった」
「噂話って凄いのな。パブには他の屋敷に仕える奴も沢山いて、そこから簡単に広まるんだ。尾ひれが付くなんてもんじゃない。中には使用人を自死に追いやったなんて噂もあったよ」
「そんなある日、俺たちは彼女に頼まれた。ローザはメイドを辞めたって、パブの皆に伝えてくれって。俺たちにももう会わないって言われた」
「俺たちは納得できなくて――でも、彼女の考えは変わらなかった。理由も教えてくれなかった。――あれ以来俺たちは他人同士だ」
二人は締めくくる。
「話はこれで全部。俺たちが彼女と言葉を交わしたのは、本当にそれが最後だ」
「そうさ。社交場で一度だけ話しかけたが、完全に無視されたしな」
エドワードとブライアンは、これで満足か? とアーサーに視線を送る。
「――つまり……彼女の悪評は彼女自身が流したものだと? なぜ……そんなことを」
「さぁな。何か事情があったんだろ」
「俺たちなんかにはわからない、深い事情ってやつがさ」
「それが急にウィリアムと婚約なんて」
「あぁ、驚きだよな」
先ほどまでは話すことを渋っていた二人だが、一度話してしまったらもう気にならないのか、彼らは素直に思ったことを口にする。