【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
第4章 湖のほとりで
1.ボート遊び
「お嬢様、この晴れやかな空をご覧ください! 絶好のボート日和ですわ!」
それはウィリアムと婚約を結んだ夜会から約三週間が経った――今にも季節が夏に移り変わろうとしている頃のこと。
ウィリアムとボート遊びに出掛ける時間を目前にして、ハンナはいつも以上にテンションが高く、窓から外の様子をうかがっていた。
「いいですか、お嬢様! 一に笑顔、二に笑顔ですからね!」
「わかったから、窓の外に頭を出すのはやめてちょうだい。落ちたら怪我じゃすまないわ」
「ご心配なく! 運動神経には自信がありますから!」
「そういう問題じゃないのよ」
私は彼女の浮足立った様子に辟易しながらも、顔に笑みを張り付ける。
口では彼女の言葉を肯定しつつも、内心では「いっそ雨でも降ってくれたら良かったのに」と、晴れ渡る空を呪っていた。
先のハンナの言葉どおり、今日はウィリアムに誘われてボート遊びに出掛ける日。約束の時間はまもなくだ。――けれどその時間が迫るにつれ、私の憂鬱さは増していた。
「本日はアーサー王太子殿下もお越しになるのでしょう? はぁ~、きっと素敵な方なのでしょうね。一目お目にかかりたいですわ」
「殿下、ね」
それはウィリアムと婚約を結んだ夜会から約三週間が経った――今にも季節が夏に移り変わろうとしている頃のこと。
ウィリアムとボート遊びに出掛ける時間を目前にして、ハンナはいつも以上にテンションが高く、窓から外の様子をうかがっていた。
「いいですか、お嬢様! 一に笑顔、二に笑顔ですからね!」
「わかったから、窓の外に頭を出すのはやめてちょうだい。落ちたら怪我じゃすまないわ」
「ご心配なく! 運動神経には自信がありますから!」
「そういう問題じゃないのよ」
私は彼女の浮足立った様子に辟易しながらも、顔に笑みを張り付ける。
口では彼女の言葉を肯定しつつも、内心では「いっそ雨でも降ってくれたら良かったのに」と、晴れ渡る空を呪っていた。
先のハンナの言葉どおり、今日はウィリアムに誘われてボート遊びに出掛ける日。約束の時間はまもなくだ。――けれどその時間が迫るにつれ、私の憂鬱さは増していた。
「本日はアーサー王太子殿下もお越しになるのでしょう? はぁ~、きっと素敵な方なのでしょうね。一目お目にかかりたいですわ」
「殿下、ね」