【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
「君も……持っているのだろう?」
「――ッ」
アメリアにとってそれは予期せぬ言葉だった。全てを見透かすようなアーサーの目に、動揺を隠せなかった。
心臓が加速する。自分がどんな顔をしているのかもわからなくなる。
アーサーはそんなアメリアに、まるで独り言のごとく問いかける。
「まさかとは思っていたが、君の態度に確信したよ。――それで? 今まで息をひそめていた君が、急にウィリアムに近づいた理由はいったい何だ?」
君を知っている、と言わんばかりの探るような視線。
アメリアはその視線に、殺意を向けられる以上の恐怖を覚えた。
「君の本当の目的は何だ? ルイスか?」
「……ルイス?」
唐突にアーサーの口から放たれる、ルイスの名――。
けれどアメリアにはその意味がわからなかった。
いったいこの男は何を言っているのか。何を知っているというのか。本当に私のことを知っていると――そう言っているのだろうか。
そしてそのこととルイスに、いったいどんな関係があるというのか。
アメリアは困惑する。けれど同時に妙な納得感も覚えていた。
アーサーの口からルイスの名が出たということは、ルイスには何かがあるということだろう。であるなら、ウィリアムとの縁談がルイスの策略である可能性が高まることとなり、それはアメリアの考えと合致する。
しかし、わからないのは自身の目的がルイスであると疑われたことだ。アメリアの目的は、ウィリアムを死なせないこと、ただそれのみであるというのに――。
その感情が表に出てしまっていたのだろう。
アーサーは「何だ、違うのか」と呟いて、何か期待外れであったときのような……同時に安堵したような、複雑な顔をした。
「いったいどういうことですの? わたくし、殿下のおっしゃる言葉の意味がわかりませんわ。そもそも、ルイスと会うのは今日が初めてですのよ」
「初めて? だがルイスは、君のことをよく知っているようだったが?」
「何ですって?」
――全く話が見えない。アメリアはそう思ったが、けれどここで隙を見せるわけにはいかない。
アメリアは渾身の力でアーサーの腕を振りほどき、睨みつけた。
「ルイスについてわたくしが殿下に申し上げられるようなことは何一つございませんわ。本当に、ただの一つも」