【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
私が一瞬過去の記憶を思い出していると、彼はそれに気付いたのか、私の顔を覗き込む。
「アメリア嬢? どうかなさいましたか? 顔色が優れないようですが……」
「――っ」
――近い。
天然なのか、故意なのか。できればその顔をこれ以上近付けないでほしい。どうしたって千年前の彼の姿が思い起こされてしまうのだから。
「ファルマス伯。そのようにレディに近づくなど、不躾ではございませんこと?」
無表情に、淡々と。誰が相手であろうと無遠慮に物を言う伯爵家令嬢、アメリア・サウスウェル。これがいつもの私。いつもの、アメリア。
彼は私の冷たい物言いに一瞬怯んだ様子だったが、すぐに元の笑顔に戻る。
「これは申し訳ない。あなたがあまりにも美しいものですから」
「なんですって?」
普通ならば機嫌を損ねるところだが、この男はなかなか図太い神経をしているらしい。
しかもこんな歯の浮くような台詞……芝居の観すぎなんじゃないかしら。
――にしてもこれは聞いていた話と違う。ハンナによれば浮いた話の一つもないということであったが、どうやらこれは……。
「そんな安っぽい言葉でレディのご機嫌を取ろうだなんて、つまらない方」
「おや、これは手厳しいな」
「…………」
この男、かなりの食わせ物かもしれない。似ているのは外見だけということか。
思い起こせば、彼の外見は転生の度に変わっていた。魂やその本質は変わらなくとも、性格は環境に大きく左右されるのだろう、今回の彼も千年前とは確かに違っている。
かくいう私も、千年前とは全く別の人格と言っても過言ではない。