君の記憶の中の僕、   僕の記憶の中の愛
僕たちの交際はとても順調だった。
お互い何もかもが初めてだった。
異性と付き合うことも、キスすることも、肌を重ねることも・・。
この世から全て無くなってもいいと思える程、ハルだけが存在してくれていればいいと思える程
僕にとっては彼女は大きな存在となっていくのにさほど月日は必要なかった。
僕は大学を卒業と同時に彼女との結婚を思い描く様になったのは、付き合い始めて二年ほど経った頃だった。
その頃から僕たちの会話の中にも自然と一緒に暮らしたら とか、キッチンはこんなのがいい とか、話題になることが増えた。
それもあって、ハルも同じ想いなんだと感じていた。

高校を卒業した彼女は短大生となり、その後叔父である店長の店に正社員として就職した。
社会人として一年先輩になったハルを追う様に僕は大学を卒業し就職した。
そして付き合って三年目の冬に僕は彼女にプロポーズをした。

「この先もずっと365日この愛を届けたいから、僕の隣に居てくれませんか?」

学業と両立をバイトで買える指輪は豪華な物ではなく極々小さなダイヤだったけれど、告白した時の様に
彼女は「はい。」と答えた。
けれど、この時は瞳にいっぱいの涙を溜めて僕の想いを受け止めてくれた。
そして溢れこぼれ落ちた涙をめいいっぱいの笑顔で拭う彼女を見て、本当に綺麗だと思った。
気付いたら僕ももらい泣きしていて、恥ずかしさを誤魔化す様に、彼女を引き寄せ抱きしめた。

「蓮くんのこの中、落ち着く・・」

ポツリと言ったハルがとてつもなく愛おしく感じ、幸せに思えた。
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