理想を描く世界で君と
そういって歩き出す私の背後でため息が聞こえる。

でも足音はずっとついてくる。

そのことに少し安心しながらこれから話すことを考えた。

廊下の突き当たり、階段の影。

「信じられないかもしれないんだけど」

言い出してから不安になる。

「なんだよ」

私は拓馬に向き直した。

「多分ここ、私の理想を叶えた世界なの」

驚いた顔の拓馬と目が合う。

そりゃそうだ。

私だってこんなこと急に言われても信じられない。
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