妖狐の末裔の狐森くんは、嬉しいと狐の耳が出てくる
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世界
憧れていた高校生活。
キラキラした青春。
西村琥珀にとってそれは、誰かの一言によって無くなった。
『西村さんってさ、なんかお金持ちそう』
『たしかに!高嶺の花って感じだよね』
『近づき難いというか、ね!』
入学して早々に見た目でつけられた、これらのイメージは徐々に人を寄せ付けなくなった。
【西村琥珀】
高校2年生。
黒髪ボブ。前髪は重め。
目には光が反射してとても綺麗。
それから、血色感のある頬と薄い唇。
確かに高貴な雰囲気は、高嶺の花という言葉が彼女の見た目によく似合う言葉だ。
ならば彼女の性格面までもが、絵本で見るような高級なお姫様のようなのか。
お淑やかで、物静か。
清楚で、小さく笑う。みたいな。
いや、違う。
彼女は昔からおしゃべりが好きで、公園に遊びに行っても近所の友達とずっと話していた。
ブランコに乗りながら、昨日のテレビの話。
かくれんぼをしている時も、ドーム状の遊具で一緒に隠れていた友達に、話をしたくて声を出してしまいバレてしまったこともある。
それからよく笑う。
海外のコメディドラマが大好きで、今でも一番彼女に笑顔を提供しているのはこれだ。
なのに、学校では寡黙で微笑む程度。
この世界の空気は西村にとって、濁っていた。