妖狐の末裔の狐森くんは、嬉しいと狐の耳が出てくる

告白


○再会して、しばらく経った頃。

二人は放課後によく出かけるようになった。


ゲームセンターでクレーンゲームに必死になったり、映画館で西村が大泣きしたこともあった。

そして、最後にはいつも喫茶店で夕食を食べて解散した。




狐森の教室にいつも西村が迎えに来る。


ある日。

その教室から靴箱までの間。

廊下を並んで歩く。


西村「シュークリームのシューってキャベツって意味なんだよ」

狐森「そうなんですか」

西村「テレビで前にやってたんだけど、焼きたてのシュークリームがキャベツに似てるからってのが由来なんだって」

狐森「確かに似てますね」


西村にとってこの世界(がっこう)の空気が澄んだ瞬間だった。


表情ひとつ変えずに当たり障りない返答をする狐森に魔法をかけられた。


西村はずっと欲しかった。

それを狐森は持っていた。



○現在。授業から抜け出して、屋上にいる西村(冒頭部分)


西村「ねぇ、今日はどこ行こうか!放課後」

狐森「先輩はなんで他の人じゃなくて、僕と居てくれるんですか」

珍しく顔を赤くする狐森。


西村は驚きつつ、自分の気持ちを伝える時が来たのだと思った。


西村「琥太郎のこと好きだから」

狐森の頭から耳が出てきた。

しかし、西村の気持ちは少し違った形で伝わったようだった。
 

狐森「好きじゃない人とこんなに一緒にいないでしょう?
その好きな人の中からなぜ僕なのかと気になっているんです」


西村「え、あ、うーん」

西村は苦笑いをするしかなかった。
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