あの道を、貴方と。

「・・・・ねぇ、新」

「どうした?」

わたしと新は、天井裏を通ってあの、三畳ほどの部屋にいた。「戻らないの?」って聞いたら「この時間はあの通りは人が通って見られる可能性がある」だそうです。だから今はいつの間にか新に渡していた(後で聞いたら厨房で盗んでたんだって。「綱吉さんの許可は得てる」って言われても、綱吉さん、厨房になんて言って納得させたんだろ?)おにぎりを二人でもぐもぐ食べている。

「この部屋って何のためにあるの?」

「・・・本来ならここで、あのうろから侵入してきた敵を撃つんだが、俺たちが気づかないと、ただの空間だな。どうするべきか・・・」

「普通に、ここに落とし穴とか作ったら?で、その中に『撒菱』蒔いといたら怪我させやすいと思うけど」

「なるほど。後で涼に相談してみよう」

「ねぇ、さっき聞いた時から気になってたけど、涼って誰?」

「俺の妹。まぁ、涼を一言で表すなら俺と反対、だな」

「ってことは、涼は頭脳派?」

「そ。本来なら涼が行くのが正しいんだろうけど、体力があまりないこと、[松尾芭蕉]を継いだのが俺だったからそれになった」

「それ、気になってたけど、[松尾芭蕉]を継ぐってどう言うこと?」

「簡単に言うとじいちゃんの作った[松尾芭蕉]の詳しい性格とか、経歴とかが載った本のこと。後、さっき言ってた大量の俳句もこの本の中に入ってる」

「へぇ、つまり、その本がないと完璧な[松尾芭蕉]にはなれないってことね」

「そう言うことだ」

パクッとおにぎりの最後の一口を口に入れながら、新が言う。

「まさか、あの、松尾芭蕉が忍者だったとは・・・」

「千夜の時代は芭蕉はどんな人って言われてんだ?」

「まず、忍者って時点で違うよ・・・それに、芭蕉が忍者って説自体否定されてるし」

「そうなのか・・・多分だが、主人様が裏で手を回したんだろ」

「っていうか、新と最初に会ったとき、一人称僕じゃなかった?今の格好で俺って言うと違和感ありまくりなんだけど」

「まぁ、そうだろうな、俺も容姿なら僕の方が都合がいいか、って思って一人称僕にしてるし」

「あ、じゃあ俺が普段使い?」

「普段使いって、言い方・・・まぁ、あってるけどさぁ」

「でしょ?ならいいでしょ?せっかくだしそれぞれのこともうちょっと話そうよ。どうせまだ時間あるし」

そう言って腕につけてる時計を見る。時刻はまだ二時にもなっていない。わたし達がここを出るのは日が沈んだ後らしいから、軽く見積もっても三、四時間ぐらいここで待機。そんな時間まで無言なんて、居た堪れない。

「そうだな。それじゃあさ、まず俺から聞いていいか?その、腕につけてるのってなんなんだ?」

「あ、これはね、時計って言って・・・」

そんな会話から始まった「お互いのことを知ろう大会」(命名新)は思いのほか盛り上がって、日が沈む時間まで話し続けた。そのせいで最後の方は二人とも喉が痛い、ってぼやいちゃたけどね。
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