あの道を、貴方と。
「・・・さて、飯も食べたとこだし、暗号を作るか」
「・・・・・・はい」
なんでわたしがこんなに落ち込んでるかって?さっき新にめっちゃ怒られたからです、はい。
怒られた理由はあの爆弾発言のせいで沙優にわたしがタイムスリップしていることを言わないといけなくなっちゃったから。
まぁ、江戸時代の人からしたら十五になる女の子がご飯の炊き方も知らないってなったらそりゃあ「はい?」ってなることみたいだけど。
で、沙優に事情を説明することになってそれに意外に時間がかかってその分ご飯を食べるのが遅くなって新の怒りが爆発しちゃったんだよねぇ・・・まぁ、わたしの失言のせいだから素直に反省するよ。流石に。
「暗号は千夜が作ってくれ。原文は俺が作るから千夜はそれを暗号に変えてくれ。で、その後俺が確認するから」
「ん。了解」
「原文は・・・・・・・・・これで頼む」
「えっと・・・ふむふむ・・・それなら・・・」
最初だからか、そんなに量がないし、これでいいかな?
「・・・・・・できたよ」
「早っ!どれどれ・・・」
わたしは新に暗号の原案を書いた紙を渡す。新はそれを受け取って文字を指でなぞって読む。
にごっうこりうゅへうとかうんちりゃょくう
「・・・これ、解読したら原文と違うってことはないよな?」
「ないない。で、どう?」
「・・・さっぱりわからないんだが」
「えぇ、今回は結構簡単だったのに。ギブアップ?」
「そのぎぶあっぷというのがよくわからねぇがとりあえず降参!答え教えろ!」
「えぇ、もうちょっと考えてよぉ・・・」
「お、作ってるねぇ。新の暗号嫌いはまだ治らないのかい」
「沙優さん。そうみたいですよ。あ、優さんもこの暗号みます?」
「お、せっかくだし見せてもらおうか」
わたしは新が持っていた紙を無理矢理奪い取って沙優さんに渡す。
「・・・ふーん・・・なるほど・・・」
沙優さんは最初こそ悩ましげに眉を潜めていたけどすぐに閃いたのか、目を丸くしてわたしを見る。さすが情報収集が得意な甲賀の忍者。
「わかりました?」
「あぁ、多分だけどね。ってか、こんな暗号をすぐ作るなんてすごいね」
「えぇ⁉︎なんで分かるんだよ、二人共!」
「じゃあ、答え合わせする?」
「する!」
即答・・・もうちょっと頭使おうよ。
「えっとね、今回の文、二行でちょうど文字数も一緒だったからできたんだけど。これを交互に分けて考えるの」
「分けて・・・あ!」
「分かった?」
「あぁ。これ、交互に分けて読むと文章になる!」
「そう!つまり・・・」
に っ こ う へ と う ち ゃ く
↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
にごっうこりうゅへうとかうんちりゃょくう
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
ご う り ゅ う か ん り ょ う
「正解は、[にっこうへとうちゃく]と[ごうりゅうかんりょう]!確かに俺の書いた原文通りだ!」
「せいかーい!」
パチパチと手を叩くと新の顔が嬉しそうに綻ぶ。うわ、イケメンだから破壊力が・・・
「じゃ、その手紙を運べばいいんだね」
「あぁ、沙優。頼んだ」
「もちろん。しっかりと主人様の所へ運ぶから」
沙優は一回別の部屋に移動した後、忍者装束をきて戻ってきて、新から手紙を受け取る。
「今から行ってくる。火の元には気をつけてな」
「あぁ。沙優。無事を祈る」
「新も、千夜も任務の成功を祈る」
お互いに無事を祈ったら沙優は出発だ。わたし達はここで一泊してから出発ってことになっている。
「ふわぁ、ねむ・・・」
時計を見たら十時を回っていた。日の出とともに起きて日が沈むと寝ちゃう生活を続けていたからか、もう眠い。
「そうだな。そろそろ寝るか」
「明日の目的地は?」
「裏見の滝に行った後、玉生に止まる予定」
「りょーかーい。おやすみなさーい」
「あぁ、おやすみ千夜」
転生九日目。日光でお参り完了!