あの道を、貴方と。

什肆

証拠もゲットした所で脱出のお時間だ。

最初に、何が目的なのかできるだけわからなくするために、と背負い袋から取り出したのはわたしが書いた［奥の細道］の原稿の写し。

持ってきていた紙のうち三分のニほどを手紙があった所において代わりに本物の手紙を背負い袋に入れる。よし、次。

次に、手甲から取り出したのは液体の香。わたしが侵入したとバレないように薄く香を炊いておいて体臭を誤魔化すのだ。

行燈（今でいうランタンみたいな感じのね）に引かれている油にニ、三滴ほど入れて置く。明日になったら香を入れた痕跡もなくなる。よし、次。

最後にわたしが歩いたことでできた布団のしわやさっき家老に飲ませた時に溢れたお酒を拭いて違和感をなくしておく。

これが一番重要だったりする。やっぱり一番重要なのは起きた時に違和感を起こさせないようにすることだかね。

全ての後片付けを終えたら正真正銘の脱出だ。手紙をゲットできたところでここを脱出できなかったら意味ないもん。

（誰も・・・いないね。よし）

滑るように部屋を出てそっと襖を閉める。この一連の動作に誰も気づかなかったことを確認して素早く走り出す。

脱出の時には『座探しの術』は使わない。行きに想定以上の敵を気絶させてしまった。これ以上気絶人数を増やしたら流石にバレるような気がする。

さっき通った通路をできるだけ素早く移動する。あとは早さが勝負だ。最悪ここで乱闘になっても手紙がある以上、別に隠れる必要がないから大暴れしてもいい・・・と思う。あんまやりたくないけど。

幸い、特に誰にも会うことなく侵入した床下の入り口までつくとこができた。

素早く中に入って『鎹』をしたから打ち込む。『鎹』は本来は戸を開けなくすることができる道具だけど、こんな感じであいた穴をしたから蓋することもできる優れものだ。ちなみに、これを使えば石垣とかも登れる。やったことないけど。