あの道を、貴方と。

『元気か?これを読んでるってことは無事千夜の時代に戻れた、ってことだよな?無事読んでくれることを願うぜ。
あの後、急に千夜が荷物と一緒に消えた時、最初はそりゃあ驚いた。さっきまで普通に会話してたのにが急にいなくなったからな。でも今は任務の途中だ、と思い出して慌てて主人様に手紙を送って代役をこっちへ寄越してもらったんだ。で、来た人、誰だったか分かるか?なんと、最速で修行を終わらせた菊が来たんだ。そのお陰で予定よりも三日ほどつくのが遅れたんだぞ!
奥の細道の旅、というより任務はあの後は特に怪しい藩はなかった。あの後無事予定通り新潟まで来てから大垣まで行ってそこで[芭蕉]を引退した。俺自身はその後京都へ行ってちょっといざこざを解決した後、江戸に戻って元の仕事に戻った、ってことだ。で、その京都でのいざこざで俺の時代の松本流頭首と知り合ってな。流れで千夜の話をしたらせっかくだし手紙を書いてみたら?と言われて、書いてみた。
あ、書き忘れるところだった。[奥の細道]の原稿、千夜持ったままだろ⁉︎出版する時めちゃくちゃ焦ったんだぞ!俺が覚えてた記憶と残ってた覚書を頼りに無事かけたけどな⁉︎
後、あの四人組についての続報だ。菊はさっき書いたよな?奥の細道の道中に本の好みがあって結構仲良くなったんだ。泉は江戸城の大奥で潜入員として動いている。あいつ、女だったな。俺気づかなかったんだけど、千夜は知ってたか?桜は紅葉と作助と同じように指南番として若手の忍者を指導しているんだと。俺は見たことないけど。一番意外だったのが林。あの、一番最初に千夜に倒されてたやつだが、あいつ、今は涼と一緒に薬学とか火薬の実験に熱を注いでてな。林曰く、自分は薬師なんだとよ。結構涼といい感じでな、もしかすると結婚とかするかも、って菊が話してたけどまだ妹はやらん。結果どうなったかは千夜の家にある家系図かなんかで確認してくれ。そういえば菊たちに千夜の正体言っちゃったが大丈夫か?まぁ、もういないし大丈夫か。千夜が松本流だ、って言ったら一回ぐらい稽古をつけて欲しかった、ってめちゃくちゃ嘆いてたぜ。で、後付けみたいな感じで千夜が十八代目[風雅]だって言ったら桜のやつ、白目剥いて倒れたんだぜ。かめら、だったか?あれがあったら絶対使ってしゃしんを千夜に見せたけどな。ないものねだりしてもしょうがないか。
千夜がいなくなってからも無事任務を終わらせることはできた。でも、欲を言えば最後まで千夜と任務をやりたかった。もう、俺と千夜が会うことも、話すこともできないだろうけど、言いたいことは全部今書いた。もう、心残りはない。あ、一つ忘れてた。

ありがとう、空。

追伸 千夜、涼の薬全部持っていっただろ‼︎これ、一生恨むからな⁉︎
宝永六年 新 松本 空 』

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