あの道を、貴方と。

(・・・どこまで行くんだろう?)

わたしが尾行を初めて一、二時間ぐらいが経過したかな?わたしはまだ気づかれずに尾行を続けている。

まぁ、相手にバレないように『常の足』を使うプラスで『うずら隠れ』の応用を使って歩きながらも気配を完全に消している状態だから見つかる可能性はほとんどないだろうけど。

(場所的には・・・江戸城の方かな?)

だんだん目の前にそびえ立っていた江戸城(多分。だって今じゃ皇居になっててちゃんと見たことないんだもん)がだんだん近くなってきていることからわかる。

(・・・まさか、将軍に使える御庭番・・・は八代将軍徳川吉宗の時代か。まぁ、それらしい役職はあるけど)

戦国時代が終わって戦いのない江戸に時代が移っても、忍者の一部は幕府に召し抱えられていた。

表向きは鉄砲組の一員として。その裏では隠密、内偵活動で幕府を支える。幕府だけじゃなくて藩に召し抱えられている忍者もいたけどね。

そうなことを思っていると、尾行相手がふっ、と周りを見渡す。尾行がついて来ていないか、確かめているみたい。くるっと一周見渡して、尾行者がいないことを確認したのか、彼はものすごく自然に脇道に入っていく。

(ふーん、ここねぇ・・・)

脇道に入ってみたいけど中に入って「たまたま道を間違えました」は通じないよね。流石に。

(でも、興味があることはとことん調べるのがわたしの性分なんで!)

ってことで誰もわたしのことを見ていないのを確認して例の脇道に入ると同時に中川さんに貸してもらった着物を脱いで黒装束になる。着物はサッと折りたたんで圧縮。

嵩張るから袂に入れていた背負い袋に入れる。全ての作業を終えるとわたしは足に力を入れて飛び上がる!

(っと。気づかれて・・・ないね)

そのあとは簡単。木の上でさっきの男性を追いかける。人の気配を感じたらすぐに隠行術の一つの『狸隠れ』でやり過ごす。

四回目の狸隠れの後。

(あれ・・・?あの人は?)

いつの間にかあの人がいなくなっていた。多分、近くの隠し通路にでも入っちゃったんだと思うけど・・・ぱっと見それらしいものはないみたい。

(えっと、こういう時は・・・)

わたしは近くに誰もいないことを確認して下へ降りる。音を立てずに降りてみてぐるっと周りを見渡す。

(えっと・・・あった!)

小声で「やった!」と呟いて草が茂っているところの一角に近づく。そこには近くの草を結んだ目印。その近くの木を見ると小さなうろ。

(ここが入り口だね)

そっと足を入れると中はちょっと蒸し暑いけどそれ以外は特に気になるところはない。

(・・・よし)

わたしは背負い袋の結び目が解けないようにもう一度しっかり結び直してとぉ、という小声で発した効果音とともにうろに飛び込んだ。
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