キス、KISS、キス!─異端者と呼ばれた追放死刑の村娘、2つの顔を持つ俺様陛下の溺愛キスで幸せお腹いっぱいです!
ついに来た。これを聞かれるのが嫌だった。
食事の誘いもイヤだったし、フルフェイスマスクも不気味でイヤだし、聞いて欲しくないことも聞いてくる。
(嫌なこと全部してくるな、王様)
サーシャは隣に立ってじっとり見下してくる全面マスクを見上げて、目に涙が溜まってきた。とにかくマスクの虚無が不気味で委縮する。だがサーシャはこの虚無に向かって、覚悟を決めて口を開いた。無視はダメだ。
「あの、すごく美味しそうなのですが。食べられなくて」
「身体の調子が悪いのか?」
「いえ、そうではなくて。食べ物を食べられません」
フルフェイスくちばしマスク王様は首をひねった。その仕草の意味が通じて、サーシャはあ、この人って人間だとちょっと安心した。王様はわざわざ椅子を運ばせて、サーシャの隣に座った。
「じゃあサーシャは何を食べるんだ?」