キス、KISS、キス!─異端者と呼ばれた追放死刑の村娘、2つの顔を持つ俺様陛下の溺愛キスで幸せお腹いっぱいです!
王城の庭と呼ばれれる場所は完璧に「畑」だった。食べ物が育つ生命力あふれるある意味美しい場所ではあるが、庭園の意味で言うと違う。
王都の外は死の空気に包まれているため、王都の中で食べ物を生産するしかない。王城内の庭と、騎士団宿舎の周りでも畑は営まれていた。
カルラ国の国民は騎士団以外全員この王城内に住んでいる。もう外に住めるところがないからだ。
畑の庭を歩いて行く王様に、すれ違う大人も子どもも拳で左胸をコンコンと叩く仕草をした。
「あ、王様だ!」
「ご挨拶してね、坊や」
母親に言い含められた男の子もコンコンと左胸を叩いては通り過ぎて行った。
「あの、左胸を叩くのはどういう意味なんですか?」
サーシャが問うと、王様のド迫力な顔がサーシャに向いた。
「俺の左胸には王の印として、刺青が彫ってある。皆、それに敬意を表して左胸を叩く挨拶をしてくれる。古くからある習慣だな」
「へぇ、習慣ですか。私も今度からするようにします」
「期待してる」
サーシャは異国となると文化がまるっきり違うなと感じながら、今度王様に会った時には忘れないようにと心に刻んだ。
畑、別名は庭園というものを散歩してから、王様は畑を一望できるベンチにサーシャを座らせた。
(あ、やっぱり隣に座るんだ)