キス、KISS、キス!─異端者と呼ばれた追放死刑の村娘、2つの顔を持つ俺様陛下の溺愛キスで幸せお腹いっぱいです!


レオナルドはあまりの衝撃に声が出ず、身体の自由もきかなかった。人間あまりに驚くと止まるとレオナルドはこの時初めて知った。

レオナルドの時は止まってしまっていたが、現実の時は止まらず、ガランガランと定刻を知らせる鐘が鳴った。サーシャが音に気づいてさっと立ち上がる。


「あ、私。ルテさんと約束があるのでお先に失礼しますね」


左胸にコンコンと拳をあてて挨拶したサーシャはにこりと柔らかく笑った。

その笑みはいつも通り確実に可愛かったのに、恋人はなぜかレオナルドと別れたつもりらしい。レオナルドの身体は止まったまま、レオナルドの胸には絶望叫び鳴いた。


(ちょっと待て、フッたつもりも、別れたつもりも絶対ない)


胸の内で叫んでも、あいかわらずショックで一切声が出ず、身体も微動だにしない。サーシャはこの世で唯一レオナルドを腰砕けにして動けなくする女である。


「王様、お話聞いてもらってありがとうございました。人にぶっちゃけるとちょっと楽ですね。では、また」


ひらりと長い髪を靡かせて、サーシャはさっさと階段を下りて行ってしまった。


(俺、絶対別れないから!)


切実な叫びが声になることはなく、王様レオナルドは長い間その場で動けなかった。

別れない意志の強いレオナルドではある。だが、人生で初めて恋人との別れを告げられた衝撃は強く、王様はしばらく寝込んだ。

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