キス、KISS、キス!─異端者と呼ばれた追放死刑の村娘、2つの顔を持つ俺様陛下の溺愛キスで幸せお腹いっぱいです!
ルテと団長がレオナルドから出た不可解な言葉の意味を考える。
今この場所に、レオナルドの恋人も、浮気をしたものもいなかったはずだ。団長がサーシャにキスしようとしたのは浮気ではなく、ルテも了承済みの仕事だ。
同じくサーシャも、ここにそんな人物はいないことを了承していた。サーシャはこの緊迫感の中でぺろっと素直に疑問をぶつける。
「レオさん、俺の恋人って誰ですか?」
「は?お前に決まってんだろ。話をしに来たんだ。お前は別れたつもりか知らないけど、俺はまだ別れてないのに、浮気かよ」
サーシャにすでに恋人ではないですけど?と言われたと思ったレオナルドが怒りの風を吹かせる。
狂暴な風が近くの死の森の木をガンガンなぎ倒していくので団員が逃げ惑い始めた。副団長やめて!の声が誰にも届かない。
「いつの間に団長の女になったんだよお前は」
サーシャは風に追われる団員を気に掛けるどころではなく、ぽかんと口を開けてレオナルドを見上げるばかりだ。レオナルドの脇からそっと降ろされて、レオナルドとサーシャが真正面から向かい合う。
「わ、私、レオさんの女じゃありません」
「まだ別れてないって言ってるだろ」
サーシャが事実を述べると、レオナルドの美貌が一瞬で狂気の獣のように歪んだ。
(顔、こっわ!!)