キス、KISS、キス!─異端者と呼ばれた追放死刑の村娘、2つの顔を持つ俺様陛下の溺愛キスで幸せお腹いっぱいです!

妊婦の女性はサーシャの手を握って、罪悪感にぼろぼろ涙を零した。サーシャも釣られて涙がこぼれてしまった。


彼女もその夫も、子どもを守るために祖国を出る。


カルラ国を愛していればいるほど、辛い選択だったはずだ。サーシャがめそめそ泣いていると、背後にレオナルドが現れて頭をぐしゃぐしゃに撫でられた。


「これ、王様から餞別」

「王様から?」


レオナルドが妊婦の女性の手の平に一枚の紙を乗せた。涙をぬぐった女性はその小さな紙を裏表ひっくり返してみてみたが白紙だった。


「風の便りっていう魔法のかかった紙だ。もし何かが起きて、王様がお前に帰って来て欲しいと願ったら青く染まる」


王様レオナルドの、いつまでも国民と繋がっていたい想いが詰まった紙だった。妊婦の女性は小さな紙を握り締めて胸に大事に抱きしめた。


「もし、この紙が青く染まる日が来たら、絶対帰ってきます。風の便りが届く日を心待ちにしていますと、王様にお伝えください」
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