キス、KISS、キス!─異端者と呼ばれた追放死刑の村娘、2つの顔を持つ俺様陛下の溺愛キスで幸せお腹いっぱいです!
最後に笑顔を見せてくれた妊婦の女性は、くちばしマスクを外して、夫と共に死の森を出て行った。
彼女の夫はずっと彼女の背を撫でて寄り添っていた。二人がこの旅の先で愛し合い続けることをサーシャは切に願った。
彼女たちの背中を見送って、サーシャは隣に立つレオナルドと自然に手を繋いだ。
「レオさん、もしかしたらなんですけど……私の母も、ああやってカルラ国から逃げ出した人だったのかもしれません」
亡くなった母はサーシャに過去を語ることをしなかった。けれど母は晩年、祖国に帰りたいと何度も泣いていた。
「小さかった私を守るために」
母はカルラ国の出身で、サーシャは毒気が蔓延する前に身ごもった子だったのかもしれない。そう考えるとサーシャが魔法を使う理由に説明がついた。
「サーシャは一回出て行ったけど、また俺の国に帰って来てくれたってことだな」