キス、KISS、キス!─異端者と呼ばれた追放死刑の村娘、2つの顔を持つ俺様陛下の溺愛キスで幸せお腹いっぱいです!


誰もが王都生還を喜ぶ中、レオナルドは形良い片眉を高く上げた。長い留守をしている間に国王のお仕事は休業中だ。留守を任せたものたちが王様レオナルドの帰りを待ち侘びている。


レオナルドが軽く指を動かすと風に守られて浮かんでいるサーシャが、ふわふわレオナルドの側に寄ってきた。レオナルドの風魔法を使えば指先一つでサーシャを呼び寄せられる。


「レオさん!王都見えましたよ!」


初めての王都に興奮してわくわくが満ちているサーシャの笑顔を見るだけで、レオナルドは自然に笑みが湧き出てしまう。


(はしゃいでるの満点可愛い、俺の恋人)


頭が湧いて仕方ないレオナルドの恋人なるものは実はどこにもいなくて、盛大な勘違いを続行中である。レオナルドがぶ厚い手でサーシャの頭をぐしゃぐしゃ無遠慮に撫でた。手の平が彼女を可愛い可愛いしたがって堪らないのだ。


「後で王様から褒美があるから楽しみにしとけよ、サーシャ」


サーシャがぎょっと薄紅色の瞳が落ちそうなほど目を見開いた。


「お、王様?!そんな偉い人に会いたくないですよ私!怖い怖い!」


にやにや厭らしく笑ったレオナルドは、さらにサーシャの頭をかきまわしてから背を向けた。


「王都内では団長の指示に従えよ。じゃあ俺は先に行くから」


レオナルドが指先を動かすと、風魔法が解けてサーシャは静かに地面に着地した。


「ちょっと、レオさん!王様は嫌ですって!」


次の瞬間、風が吹いてレオナルドの姿は忽然と消えてしまった。サーシャは魔法の神秘にまた口が開いてしまう。


「消えた……魔法すごい……ルテさんもシュッて消えるのできるんですか?」


サーシャが隣に歩いてきたルテに問う。ルテがサーシャの肩をぽんと叩いて笑い、首をぶんぶん横に振った。


「あれはレオが異常なの。誰でもできると思わないでね?」


ルテの冷静な指摘が入った。



風を操り消えたレオナルドは、

最強の名を持つ「騎士団副団長」でありながら、その正体はれっきとしたカルラ国「国王陛下」


二つの顔を持つ、異端な男であった。

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