キス、KISS、キス!─異端者と呼ばれた追放死刑の村娘、2つの顔を持つ俺様陛下の溺愛キスで幸せお腹いっぱいです!
サーシャが目をぱちくりさせると、ルテが口元のえっちなホクロを歪ませた。悲し気に下がる眉が深刻な事態を伝えていた。
「正解よ。もう団長だけなの。出て行った人もいるけど、一番の問題は盾魔法の使い手が生まれてこないこと」
前を見据えて歩き続けるルテを見つめて、サーシャはカルラ国の状況を一つずつ飲み込んでいく。
「毒気が生まれてカルラ国がひっ迫し始めた15年前から、魔法を使える子が『全く生まれてこなくなってしまった』の」
「どうして生まれなくなっちゃったんですか?」
サーシャの素直な疑問に、儚げに笑ったルテは静かに首を振った。
「毒気の原因も、魔法を使う子が生まれない理由も。誰にもわからないわ」
ルテの哀しそうな眉を見て、サーシャはこの国を包む危機感を肌で感じ始める。王都、とは聞いていたが、察するにカルラ国の生きた領土はもはや四方を死の森に囲まれた王都だけのようだ。
「盾魔法がなくなったら、王都が死の森に食べられちゃうってことですよね」
「毒気の中では食物が育たないから……国は飢えて終わりってことよ」
死の森と王都の境目を目に映すサーシャは、生唾を飲み込んだ。
(カルラ国って、本当に滅亡間近……ギリギリなんだ)