心優しい国王は王妃を堂々と愛したい

復讐が終わる刻

その日、
オーディンは国境近くの本陣にある天幕で
戦の戦況を分析していた。
あまりにも集中しすぎて、
天幕の中に人が入ってきたことに気づかなかった。

「総大将ともあろう人が護衛もつけないとは、
あまりに無防備ではないですか。」
突然話しかけられて顔をあげると、
自分とさほど年の変わらない青年が立っている。
アスラウグの軍服を着ているが見ない顔だ。
「申し訳ないが、君は一体誰だ?」
「1度しかお会いしたことが無いので
覚えておられないのも無理ありません。
アスラウグ王国王太子ヴィーザルです。」
「なんだとっ!?」

思いも寄らない告白に慌てて記憶を手繰り寄せてみれば、
確かに舞踏会で顔を合わせた王太子である。
「念の為言っておきますがこの軍服は
倒れている兵士から拝借したものです。
私はどうしてもあなたと接触したかった。
幸い私の顔はまだあまり知られていないので、
簡単に潜り込めましたね。」
女王の影に隠れて
今まで全く存在感のなかった王太子だが
能ある鷹が爪を隠していたのかもしれない。

オーディンは警戒を緩めたわけではなかったが
危険を冒して単身で乗り込んできたヴィーザルを
信じてみようと思った。
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