心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
「まずは母の暴走について謝罪させていただきたい。
貴国の国民の多くに健康被害が出ていると聞いた。
謝って済むことではないが、
母の暴走を止められなかった私にも
責任の一端があると受け止めている。
本当に申し訳ない。」
オーディンにすすめられた席に着くなり、
ヴィーザルは頭を下げた。
その様子にオーディンは複雑な気持ちになる。

ヴィーザルの謝罪は誠意が感じられるものだが、
ここで許したところで何の解決にもならない。
国民を思えば簡単に許すことなど出来るはずがなかった。

「母は、ヘリヤ女王は哀れな人なのですよ。
誰よりも高いプライドの鎧を着て、愛に飢えています。
夫に裏切られたゆえに男を憎み、
世界中の男が自分に平伏すまで憎しみを止められない。」
ヴィーザルはアスラウグ王家の内情を
オーディンに洗いざらい打ち明けた。
オーディンはヴィーザルの話を、
ただ黙って聞いていた。

「女王の苛烈さには、正直国民も疲弊しています。
私も生まれてこの方、
息子として愛情をかけられたことはなく、
政治の駒に過ぎませんでした。
己にかけられた呪いで雁字搦めになっている女王を
いい加減解放してやりたいのです。
そしてこれは、
大切な家族と幸せだったはずの少年時代を奪われた
私の復讐でもあります。」
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