心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
まるで誰かの葬式かのような結婚式の後も
フレイアの緊張が解けることはなかった。
オーディンと言葉を交わす時間もないまま
侍女達によって引き離され、
着せ替え人形のようにお色直しをさせられる。

「王妃様、お綺麗ですわ。」
「国王陛下とお似合いです。」
というような言葉は皆無で、
侍女たちは仕事だから嫌嫌やっているというのが
ありありと分かる。

結婚式の次は国民へのお披露目だ。
国王夫妻はバルコニーに立って、
国民へと挨拶するのだ。
これまでの待遇で自分が全く歓迎されていないことを理解していたフレイアは、
出来ればやりたくないというのが本音だった。

王宮の奥深くで隠されるように育ったフレイアは、
この時まだ理解していなかった。
この王国の民たちが、
自分と自分の祖国にどれだけの憎しみを抱いているのかを。
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