心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
「王太子殿下、これは一体。」
オーズ将軍を始め、アスラウグ側の人間は
目の前で起きたことに戸惑いを隠せなかった。
ついほんの先ほどまで
絶対女王として君臨していたヘリヤは
心臓を貫かれて絶命している。

「母上、もう自由になってください。
後のことは私が引き受けます。」
ヴィーザルは意に染まった両手で
母の骸を横たえると瞼に手を当てて目を閉じさせた。

「皆も見たであろう。女王ヘリヤは崩御した。
今このときより王位は王太子である私に遷り、
アスラウグ国王ヴィーザルとして統治する。」
この言葉を以てヴィーザル国王が誕生した。
アスラウグ兵は皆膝まずき、国王への忠誠を示す。
クーデターを成したヴィーザルは
オーディンへと歩み寄り、
即時停戦と降伏を申し出た。

こうして、
何世代にもわたって続いた
アスラウグとビフレストの戦いは幕を閉じたのであった。
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