心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
侵略戦争が終結してまもなく、
フレイアは正式にギムレー宮を後にし、
オーディンの私室の隣に住まいを移した。
そこは代々の王妃が使用した由緒正しき部屋である。
ギムレー宮もこじんまりとして居心地が良かったけれど、
やはりオーディンの傍が一番心安らぐ場所だ。
いろいろと辛く苦しいこともあったが、
オーディンの様な人と巡り会えて
夫婦として人生を共にできる自分は幸せだと
フレイアは心の底から思う。

この部屋でオーディンと過ごした初めての夜を
フレイアは生涯忘れることは無いだろう。
この上なく温かい気持ちに満たされた
幸せな一夜だった。
オーディンは壊れものを扱うかのように
フレイアを優しく抱きしめた。
「あぁ、本当に長かった。フレイアをこの腕で抱きしめられる日を私はずっと待っていた。随分と遠回りしてしまったが、これからはずっと一緒だよ。」
「はい、オーディン様。私も死ぬまでずっとオーディン様のお側を離れません。」
「私が嬉しいのはね、もうこれからは誰にも遠慮することなく、フレイアを愛せるということなんだ。私はずっと愛する女性と温かい家庭を作りたいと思っていたんだ。」
そう言ってオーディンはフレイアに口づけた。
フレイアはそれを静かに受け入れる。
結婚から長い月日を経て、
2人は初めて結ばれたのだった。

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