心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
バルコニーの前にフレイアと並んだオーディンは、
フレイアに声をかける。

「大丈夫?」
オーディンの声掛けに、
フレイアはぎこちない笑みを浮かべた。
気の利いた一言でも言えれば良かったが、
何と言っていいのか言葉が出てこなかったのだ。
「気が進まないかもしれないが、どうか分かってほしい。私と同じタイミングで手を振ればいいだけだから。」
「はい。分かりました。」

いまだ冷えきったフレイアの手を取って、
オーディンはバルコニーへと進み出た。
オーディンの姿を見た国民はあちらこちらから歓声を上げる。
その様子にふっと胸を撫でおろしたオーディンは、
一歩後ろに控えたままのフレイアに前に来るように促した。

すると、どうだろう。
あれだけの歓声を上げていた国民たちは
フレイアの姿を見た瞬間にピタッと声を留めたのだ。
一瞬にして静寂に包まれた様子にオーディンは焦ってフレイアを振り返る。
フレイアの顔は顔面蒼白で人形のようだった。
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