心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
「アスラウグの人間は国に帰れ!」
「我々は王妃を認めない!」
そんな非難の声がどこからともなくあがり始めた。

最悪の事態を想定して、
親衛隊たちに指示は出していたのだが、
国民に暴力をふるうわけにもいかず、限界があった。

フレイアの身体が小刻みに震え出して、
呼吸が早く浅くなり始めた。
(まずい、過呼吸だ!)
オーディンは隅に控えていた侍従に指示を出すと、
フレイアを連れて素早く室内に戻った。

ソファにフレイアを座らせると、
自分もその隣に座って優しくフレイアの背中を撫でる。
「もう大丈夫だ。ゆっくり落ち着いて。呼吸に集中して。」
フレイアの目には涙がにじんでいて、自分でもパニックになっているようだった。
フレイアの手を取って自分の心臓に持って行き、
もう片方の手でフレイアの後頭部を優しく支えてあげる。
「私の心臓の鼓動が分かる?このリズムに合わせて深呼吸するんだ・・・そうだ、上手だね。」
< 13 / 121 >

この作品をシェア

pagetop