心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
「王妃様、はじめまして。オーディン国王陛下の側妃ヴァールと申します。ともに国王陛下をお支えしていきましょうね。」
ヴァールの言葉には刺々しさがあり、敵意が含まれているように感じたのは、
オーディンの気のせいだろうか。

「ご挨拶いただきありがとうございます、ヴァール様。フレイアです。こちらこそよろしくお願いします。」
自分の夫となった人に自分とは別に妻がいるということに、
フレイアは最初こそ動揺したものの、特に気にしていないようだったのが、
オーディンには少し複雑だった。

「王妃様をお連れしても構いませんわよね?王妃様には休息が必要です。」
有無を言わせないかのように早口でまくし立てると、
ヴァールは侍女に目線で合図してフレイアを退出させた。
正直なところ、オーディンにとってもヴァールの申し出は渡りに船だった。
これ以上フレイアを人前に立たせるのは忍びなかったし、
予定されている晩餐会にはまだしばらく時間がある。
「国民の本音は陛下の予想以上だったのではなくて?」
「あぁ、ここまでとは参ったよ。」
「これから大変ですわね。王妃様がお可哀そう。」
口ではそう言いながら、ヴァールの本心は全くそんなことを思っていないことは
オーディンにも明らかだった。
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