心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
「自分の娘ながら、ヴァールは本当に良くできた子で。今もこうして陛下をしっかりとお支えして私も鼻が高いですよ。」
高級な酒を飲んですっかり上機嫌なヴォルヴァはいつになく饒舌だった。
「お父様、ちょっと飲み過ぎですわ。程々にしてくださいませ。」
ヴァールがたしなめる。
「こんなに美しいお嬢様がいらっしゃるのだから、褒めずにはいられませんよ。陛下とヴァール様の御子が誕生すれば、この国はますます安泰でしょう。」
取り巻きの1人が意味ありげにヴォルヴァに視線を送る。
「いやはや、なんと気の早いことを。子どもは天からの授かりものと言うし、あまり若い2人にプレッシャーをかけんでくれよ。とはいえヴァールよ、私はいつでも吉報を待っているぞ！」
「もうお父様ったら！陛下、父がすみません。酔っぱらいの年寄りの戯言と思って、どうか見逃してやってくださいませ。」
「いや、構わないよ。どうか最後まで楽しんでくれ。」

これ以上絡まれてはかなわないと、
隙を見計らってそっと会話の輪から離れた。
遅かれ早かれ、この話題は必ず出ると思っていた。
国民感情を考えれば、当然フレイアよりヴァールが産んだ子が皇太子に立つことを望まれるだろう。
自分たちの国王にあの憎きアスラウグの血が流れているなど、
ビフレスト国民が許せるはずもない。
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