心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
直接的に言われたわけではないものの、
ヴォルヴァをはじめ重臣たちがフレイアとの結婚を認めたのは、
「ヴァールを側妃にする(=世継ぎはヴァールが産んだ子にする)」
という条件をオーディンが受け入れたからだった。

フレイアがビフレスト王国に馴染めていない状況で、
ヴァールが懐妊して子ども、しかも王子を生んだとなると、
フレイアの王国内での地位はどうなるのだろう。
居場所がなくなってしまうのは火を見るよりも明らかだ。
フレイアの立場が安定するまではそんな波風を立てるのは
オーディンとしても避けたい。
事実、ヴァールを側妃に迎えて以降、
関係を持ったのは婚姻初日の一回きりだ。

この日だけは拒否することはできず、
ヴァールの名誉を守るためにもやむ無しだった。
幸いヴァールに懐妊の兆しはなく数か月が経過したので、
内心ほっとしたのはオーディンだけの秘密だ。
今後避けては通れないこの問題をどう対処するか、
考えただけで頭痛がするのだった。
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