心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
すっかり夜も更けこみ、
晩餐会もお開きになった頃、
オーディンは夜着に外套を羽織ってギムレー宮へと足を向けた。
ヴァール曰く、フレイアは来ないでくれと言っているそうだが、
「はい、そうですか」とあっさりと引き下がるのは違う気がした。

何よりオーディンはフレイア本人から直接言われたわけではない。
オーディン自身は、フレイアと話したいことがたくさんあるのだ。
自分のことも知ってほしいし、
彼女のことをもっと知りたい。

この時点でフレイアを一人の女性として愛しているかと聞かれたら
正直なところYESではないが、
夫婦として歩み寄りたいという気持ちは本物だ。

足早にオーディンがギムレー宮の入口へと向かうと、
警備担当の兵士に声をかけられる。
「陛下、ギムレー宮へ向かわれるのですか?」
「そうだ。」
「それはお控えください。王妃様は陛下の来訪を拒絶されておられます。万が一陛下が来られても、お引き返しくださるようにと強く望まれています。」
「王妃がお前にそう言ったのか?」
「いえ。私はお姿を見ておりませんので。食事を持っていた侍女にこのようなメモを渡されたそうです。」
そういって兵士は一枚の紙をオーディンに差し出した。
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