心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
入り口から夫となる人の待つ祭壇まで。
普通なら可愛らしいフラワーガールに先導されて
祝福の笑顔に囲まれて歩むはずのヴァージンロードを、
たった一人で顔を引きつらせてなんとか歩ききると、
眼の前には見上げるほどに背の高い男性がいる。
ビフレスト王国国王オーディンその人だ。

恐る恐るヴェール越しに顔を見ると、
花嫁を見つめるその瞳には暖かい光が満ちていた。
背が高いけれど威圧感はなく、
穏やかな表情からは慈愛が溢れ出ている。
緊張と恐怖で冷たくなったフレイアの手を
オーディンは大きくて温かい手でそっと包みこむ。

破竹の勢いで戦争を終わらせ、
百戦錬磨の女王ヘリヤとも互角にやりあったという
オーディンのことを、
フレイアは好戦的で恐ろしい人だと思っていた。
でも実際に目の当たりにした彼は
それとは正反対で優しい眼差しと手の温もりから
フレイアを受け入れてくれることが伝わってきた。

(私は、、、何があってもこの人のために生きよう。)
フレイアはそう心に固く誓った。
オーディンに意識を集中することで
四面楚歌の凍てついた空間を
なんとか耐え忍ぶことができたのだった。
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