心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
その庭師は王太后のお気に入りで
王太后の温室の管理も任されていたが、
王太后の薨去の際に自身も高齢を理由に引退してしまった。

王太后の次にギムレー宮に住まう人間がいなかったので、
この抜け道の存在を知るものは
いまやオーディンだけだろう。

(正面から行くと兵士に止められるからな。フレイアには悪いが、こちらから行かせてもらおう。)
塀の上のフェンスをそっと開けて、乗り越える。
森の小道を右に歩けば、
こじんまりとしたギムレー宮が姿を現した。

ギムレー宮を目の前にして、ふとオーディンは考える。
結婚式以来一度も会っていないにも関わらず、
どんな顔をして会いに行けばいいのだろう。
「少し時間があったから会いに来た。」などという理由で訪問できるほどの
親しい関係になれているわけではない。
いきなり現れたらフレイアの迷惑になるだけではないか。
どうしよう・・・

オーディンがそんなことを考えあぐねていると、
ふいにギムレー宮の玄関がギィっと音を立てて開く。
その音を聞いてオーディンは思わず身を隠す。
建物の外に姿を現したのはフレイア本人だった。
(可愛い・・・)
素直にオーディンはそう思った。
< 30 / 121 >

この作品をシェア

pagetop