心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
結婚式という
自分にとってハレの日である今日を
オーディンは憂鬱な気持ちで迎えた。

妻となる女性を、
政略結婚で敵国から迎えることが
嫌だったからではない。
むしろそんなことで争いに終止符を打つことが出来るのだから、
王たるものの責務として喜んで受け入れたのだ。
しかしオーディンが受け入れても、
国民はそうは行かなかった。

何百年と血で血を洗う争いを繰り広げてきた
アスラウグ王国の人間を
ビフレスト王国の国民は心底憎んでいる。
(逆もまた然りなのだが。)
ましてや25年前の大虐殺を主導した
ヘリヤ女王の血を引く女など言語道断だと
大反対だった。

国民の気持ちがオーディンにも分からないわけではなかった。
あの不意打ちとも言うべき卑怯な奇襲攻撃で
ビフレスト王国の国民の2割近くが犠牲になったのだ。
この危機を救ったのがオーディンの父フェンリル前国王だったのだが、
この凄惨な戦いはフェンリルの性格をも変えてしまった。
救国の英雄と称えられた父はその後、
対外戦争にのめり込むようになってしまう。
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