心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
1ヵ月という時間はあっという間で、
ついにヘリヤ女王がビフレスト王国にやって来る日となった。
ここ数日、国内は厳重な警備が敷かれ、超厳戒態勢となっている。
国民たちがヘリヤ女王一団に危害を加えるようなことがあったら、
また戦時中に逆戻りだからだ。
間違ってもそういう事態は避けなければならない。
城内でも海外要人を迎える準備で
皆がてんやわんやだ。
オーディンも早朝から打ち合わせに追われていた。

ヘリヤ女王がやって来たのは
昼過ぎのことだった。
道中は特に大きな問題が起こることなく、
オーディンもホッと胸を撫でおろしていた。
だがまだ安心することはできない。
これから両国間の親善に向けた会議があるのだ。
気を抜いたり、甘い姿勢を見せれば
ヘリヤ女王の思う壺になってしまう。
オーディンは気を引き締めた。

「ふーん、無骨で地味な城だねぇ。王の居城にしてはずいぶん質素だこと。」
「遠路はるばるようこそ、ヘリヤ女王。」
間近で相対したヘリヤ女王はなかなかの迫力だ。
女性にしては背が高いのと、
彼女が持つ存在感、ばっちりと施された化粧が
彼女を等身大より大きく見せている。
「立ち話もなんですから、早速城内へとご案内しましょう。」
「あぁ、そうしてくれ。」
< 49 / 121 >

この作品をシェア

pagetop