心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
「さぁ、お客様が来たよ。」
ヴァールとの会話をさっと切り上げて、
オーディンはフレイアに声をかける。
王妃としての初仕事だ。
オーディンに恥をかかせないように気を引き締めなくては。
フレイアは心の中で気合いを入れた。

豪華なドレスに身を包んだヘリヤ女王は
圧巻のオーラをまとっていた。
晩餐会に出席している貴婦人たちは皆、
家門の威信をかけて
これでもかとドレスアップしていたが
誰よりも華やかで煌びやかだ。
凛とした立ち姿からは
あの苛烈で恐ろしい性格は想像できない。
(若い頃はビフレスト王国一の美姫と言われてたんだっけ。)
今まで恐ろしさのあまり、
まともに女王の顔を見ることができなかったが
改めて見るとその美しさに
フレイアさえも見惚れてしまう。
しかし、ヘリヤ女王の後ろに姿を現した男性が
フレイアを現実に引き戻す。

「ビフレスト王国王太子のヴィーザルです。」
オーディンにそう挨拶する声に
フレイアは思わず振り返った。
(この人が異母兄の、、、)
ヘリヤ女王には父との間に3人の子がいたが、
実はフレイアは誰一人として会ったことがない。
童顔の人懐っこい顔付きは
父にもヘリヤ女王にも似ていなかったが、
声は母親譲りのようだ。
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