心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
(どうして私には誰も声を掛けてくれないの!?)
ヘリヤ王女にはその理由が分からなかった。
自分よりも容姿が劣っていて、
パットしない雰囲気の令嬢が
頬を紅く染めながらエスコートされる姿を゙見る度に 
むしゃくしゃとした気持ちが込み上げてくる。
誰にもエスコートしてもらえない姿を見られたくなくて、
逃げるようにバルコニーへと移動した。

涼しい夜風にあたっていると、
だんだんクールダウンしてきて
幾分冷静になることができた。
落ち着きを取り戻すと同時に、
風に乗って階下の中庭から話し声が聞こえてきた。
どうやら貴公子たちが恋愛話をしているようだ。
あの子が可愛いだの、
あのカップルは破局しそうだだの、
誰が誰と婚約しただの、
真偽不明の噂話は止まらない。
なんだか居心地が悪くなって
ホールに戻ろうかと思ったその時、
自分の声が聞こえてきたので思わず聞き耳を゙立てる。


「そういえばシグルズ、王女様とはどうなんだよ?」
「どうって、別に・・・」
「最近よくダンスに誘われてんじゃん。王女様、ご執心なんじゃないの?」
ヒューヒューという冷やかしを打ち消すように、
「やめてくれよ。」
というシグルズの声が聞こえてくる。
「王女様のお相手は勘弁だ。僕にはイドゥンがいる。」
「シグルズに実は彼女がいるって知ったら王女様はどうでるかな〜力業で破談させたりして。」
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