心優しい国王は王妃を堂々と愛したい

ヘリヤ女王の命令で
衛兵たちがジグムントとフリッグを
それぞれ連行していく。
2人の姿が見えなくなると
張り詰めていた緊張の糸が切れて、
ドサっと椅子に倒れ込んだ。
2人に制裁を下しても、
心は晴れるどころか重くなるばかりだ。

ジグムントの女漁りは
貴族の間では公然の秘密だったようで、
影で貴族たちが自分のことを
寝取られ女王と噂していることも最近知った。
馬鹿にされることに耐えられないヘリヤ女王は
このとき誓ったのだ。
誰よりも強くなって、
世界の頂点を手に入れることを。

この事件以降、
ヘリヤ女王は周辺諸国への侵略を
本格化させた。
領土を拡大させ、
周辺国を属国とすることで
アスラウグはますます潤い、
ヘリヤ女王の権力は揺るぎないものとなっていった。
もうこの国で自分に逆らえる者などいない。
自国では偉そうにふんぞり返っているであろう
属国のお偉方たちが
自分にはへりくだっている光景は
なんとも気分が良かった。
ただ世界にただ1人、
思い通りにいかない男がいる。

ビフレスト王国のフェンリル国王だ。
アスラウグと並ぶ大国ビフレストを
手中に納めればアスラウグの天下である。
女王になったばかりの頃、
未熟な自分に何としても実績が欲しくて
セオリー無視の奇襲攻撃を仕掛けたこともあったが
フェンリルに防がれてしまった。