心優しい国王は王妃を堂々と愛したい
「色も匂いも本に書いてある通りね。材料も工程も間違いないし、完成だわ!」
ギムレー宮のキッチンで
大汗をかきながら鍋をかき回していたフレイアは
笑顔でトゥーラを呼んだ。

「これがそうなんですね。ドロドロしていて苦そうです。」
「良薬は口に苦し、と言うでしょ。」
「これでみんなが元気になると良いですね。」
お喋りに興じつつも、
手を止めることなく
フレイアとトゥーラが完成した薬を
小瓶に分けていると、
ドタドタと何人もの足音が聞こえてきて、
扉がバンッ!と開け放たれた。
先頭にいるのは宰相ヴォルヴァだ。

「捕らえろ!現行犯逮捕だ!!」
言うが早いが、
フレイアとトゥーラは兵士に捕らえられ、
縄で拘束される。
「何をするのですか!離してください。」
拘束される理由がわからず、
フレイアが抵抗すると
ヴォルヴァが勝ち誇った笑みを浮かべる。

「このおぞましい液体が動かぬ証拠だ。やはりアスラウグから来たお前が元凶だったのだ。この魔女め。」
ヴォルヴァはそう吐き捨てるように言うと、
ドア付近に立っていた男の肩をポンポンと叩く。
「よく知らせてくれた、モージ。これでお前の父も救われるだろう。」
モージと呼ばれた男は
決してフレイアの方を見ることはなく、
ヴォルヴァに深々と頭を下げた。
あの男は確か、
ギムレー宮を警備する兵の1人だ。
< 87 / 121 >

この作品をシェア

pagetop