ラブレターは紙ひこうき
第一話
〇学校・図書室(放課後)
図書室内で本を読む陽茉莉。
先生①「楠さん、まだいたの?」
先生①の言葉に顔を上げる陽茉莉。
陽茉莉「え、今何時ですか?」
先生①「もう17時過ぎてるわよ」
陽茉莉「やばっ」
陽茉莉、読んでいた本を閉じて棚に戻す。
先生①「ほんとに好きね」
陽茉莉「ごめんなさい、先生。本読んでると時間忘れちゃう」
先生①「鍵は閉めておくから、早く帰りなさい」
陽茉莉「はーい」
陽茉莉は先生①に手を振り、慌てて図書室を出る。
〇学校・廊下
静かで薄暗くなった階段を下りていく陽茉莉。
陽茉莉(まーた遅くなっちゃった)
〇学校・校庭
校庭を校門に向かって歩く陽茉莉。
その途中、ちょうど校庭の真ん中あたりでなにかが落ちているのに気づく。
近づき、しゃがみこむ陽茉莉。
陽茉莉(なにこれ……紙ひこうき?)
紙ひこうきを手にして立ち上がる陽茉莉。
なにか文字が書いてあることに気づき、広げてみる。
陽茉莉(え、これって……)
紙ひこうきを広げると、詩のようなものが書いてある。
陽茉莉(誰かが落としたのかな?大事なものかもしれないし……持って帰るか)
紙ひこうきをかばんに入れ、帰路につく陽茉莉。
それを3階の窓から見つめる人影。
〇タイトルコール【ラブレターは紙ひこうき】
〇学校・教室(朝)
先生②「みんな、おはよう。学校にも慣れてきたかな」
窓側一番後ろの席の陽茉莉、教室の外を眺める。
桜が散り、葉桜になっている。
気持ちのいい風が窓から入ってくる。
先生②「これ、きみたちの入学前に決まった生徒会役員だから、見ておくように」
先生②がプリントを配る。
陽茉莉の手元にきたプリントをぼうっと見つめる。
プリントにはそれぞれの役員の名前と意気込みが自筆で書かれている。
その中のある文字に陽茉莉が注目する。
陽茉莉(あれ?この字、どこかで見たような)
先生②「さて、じゃあ集会があるからみんな体育館に集まるように」
先生②の言葉に、クラスメイトが次々に立ち上がり体育館へと向かう。
〇学校・廊下
陽茉莉は友達の沙夜と一緒に体育館へ向かった。
沙夜「マリ、知ってる?新しい会長と副会長、かっこいいらしいよ」
陽茉莉「え、なんで知ってるの?」
沙夜「ふふっ」
陽茉莉と沙夜は高校で知り合ったが、沙夜はなぜか顔が広くて情報通だ。
初対面で陽茉莉のことをマリだと勘違いしたのがきっかけで、そのままマリと呼んでいる。
〇学校・体育館
全校生徒がきれいに並ぶ。
先生③「じゃあ、新しい生徒会から新入生へあいさつ」
ずらっと並ぶ先輩たちが、次々にあいさつを始める。
先生③「次、新副会長、どうぞ」
副会長の名前が呼ばれると、上級生が悲鳴に近い声を上げる。
1年生たちは戸惑いながらその様子を眺める。
礼央「ご紹介にあずかりました、新生徒会副会長の白河礼央です」
マイクを持ってあいさつを始めた副会長は、いわゆる好青年風のイケメン。
話を聞いていると社交的で明るい雰囲気が伝わってくる。
礼央「新入生のみんな、入学おめでとう。俺たちが楽しい学校生活を保障するからね」
上級生のお姉さまたちが黄色い声をあげる。
陽茉莉(確かに、人気あるのがわかるかも)
先生③「では、最後に生徒会長、よろしく」
途端に静かになる体育館。
マイクを握ったのは眼鏡をかけた真面目風なイケメン。
夏蓮「このたび新生徒会長となりました、八神夏蓮です。去年までとはまったく違う学校生活を約束します」
副会長とは違い、背筋が伸びてまっすぐにこちらを見ている。
夏蓮「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。新生活にはもう慣れたでしょうか。戸惑うことも多いかと思いますが、頼りになる先輩たちがたくさんいるので、安心してください」
陽茉莉(わー真面目ぇ)
夏蓮「さっそくですが、夏休み前に文化祭を予定しております。各クラス2名ほど、実行委員を選出してください。まずは文化祭、楽しみましょう」
会長の言葉に、先輩たちがわぁっと声を上げる。
夏蓮「それではこれから一年、よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げる会長に、割れんばかりの拍手が浴びせられる。
1年生たちもつられて拍手をする。
〇学校・教室
教室へ戻ってきたクラスメイトたち。
授業までの少しの間、友達同士で話している。
沙夜「文化祭、楽しみだねー」
陽茉莉「なにやるんだろう」
沙夜「去年までは、各教室展示みたいなものばかりだったらしいよ」
陽茉莉「そうなの?」
陽茉莉(ほんとになんでも知ってるなぁ)
沙夜「だからね、今年は会長がどんな文化祭をやるか楽しみなんだよー」
陽茉莉「なるほどね」
陽茉莉は先ほど受け取ったプリントをもう一度眺め、会長の欄を読む。
『生徒会長:八神夏蓮。女のような名前だけど男です。新入生のみんなに楽しい学校だと思ってもらえるようにがんばります。優しい先輩方ばかりなので、遠慮しないで学校生活楽しんでくださいね』
少し右に傾いた、きれいな字。
沙夜が陽茉莉の視線を追って少し笑う。
沙夜「ほんと、会長って真面目だよねぇ。それでイケメン。人気でないわけないわ」
陽茉莉「副会長とは正反対な感じだったね」
沙夜「だよね。でもあの二人、仲いいらしいよ」
陽茉莉「そうなの?」
始業のベルが鳴り、先生②が入ってくる。
〇学校・図書室(放課後)
先生①「楠さん、今日は早めに帰るのよ」
陽茉莉「はぁい、わかってまーす」
陽茉莉はもう先生とは顔なじみになってしまった。
陽茉莉は本を閉じ、早々に図書室を出た。
〇学校・校庭
昨日のように校庭へ出た陽茉莉は、そこで気づく。
陽茉莉(そうだ、昨日の紙ひこうきの文字と似てるんだ)
陽茉莉は駆け足で家へと帰る。
〇自宅・陽茉莉の部屋(夕方)
家に帰り、まっすぐに自分の部屋へ向かう陽茉莉。
机の上に置きっぱなしだった紙ひこうきを丁寧に開く。
『いつの間にか雨は止んでいた
空で太陽が笑ってた
“ほらね 大丈夫だった”
きみの声が聞こえて
心がとてもあたたかくなった
きっと明日も晴れる
それを知ってる僕は強いから
明日はもっと優しくなれる
可憐なきみにいつか言いたい
僕の隣で笑ってほしいと』
陽茉莉(今改めて読むと、これラブレターにも読める)
陽茉莉は紙ひこうきを広げたまま、今日もらったプリントを隣に広げた。
文字を見比べる。
陽茉莉(やっぱりこの字、生徒会長の字だ……これ書いたのも、生徒会長なの?)
図書室内で本を読む陽茉莉。
先生①「楠さん、まだいたの?」
先生①の言葉に顔を上げる陽茉莉。
陽茉莉「え、今何時ですか?」
先生①「もう17時過ぎてるわよ」
陽茉莉「やばっ」
陽茉莉、読んでいた本を閉じて棚に戻す。
先生①「ほんとに好きね」
陽茉莉「ごめんなさい、先生。本読んでると時間忘れちゃう」
先生①「鍵は閉めておくから、早く帰りなさい」
陽茉莉「はーい」
陽茉莉は先生①に手を振り、慌てて図書室を出る。
〇学校・廊下
静かで薄暗くなった階段を下りていく陽茉莉。
陽茉莉(まーた遅くなっちゃった)
〇学校・校庭
校庭を校門に向かって歩く陽茉莉。
その途中、ちょうど校庭の真ん中あたりでなにかが落ちているのに気づく。
近づき、しゃがみこむ陽茉莉。
陽茉莉(なにこれ……紙ひこうき?)
紙ひこうきを手にして立ち上がる陽茉莉。
なにか文字が書いてあることに気づき、広げてみる。
陽茉莉(え、これって……)
紙ひこうきを広げると、詩のようなものが書いてある。
陽茉莉(誰かが落としたのかな?大事なものかもしれないし……持って帰るか)
紙ひこうきをかばんに入れ、帰路につく陽茉莉。
それを3階の窓から見つめる人影。
〇タイトルコール【ラブレターは紙ひこうき】
〇学校・教室(朝)
先生②「みんな、おはよう。学校にも慣れてきたかな」
窓側一番後ろの席の陽茉莉、教室の外を眺める。
桜が散り、葉桜になっている。
気持ちのいい風が窓から入ってくる。
先生②「これ、きみたちの入学前に決まった生徒会役員だから、見ておくように」
先生②がプリントを配る。
陽茉莉の手元にきたプリントをぼうっと見つめる。
プリントにはそれぞれの役員の名前と意気込みが自筆で書かれている。
その中のある文字に陽茉莉が注目する。
陽茉莉(あれ?この字、どこかで見たような)
先生②「さて、じゃあ集会があるからみんな体育館に集まるように」
先生②の言葉に、クラスメイトが次々に立ち上がり体育館へと向かう。
〇学校・廊下
陽茉莉は友達の沙夜と一緒に体育館へ向かった。
沙夜「マリ、知ってる?新しい会長と副会長、かっこいいらしいよ」
陽茉莉「え、なんで知ってるの?」
沙夜「ふふっ」
陽茉莉と沙夜は高校で知り合ったが、沙夜はなぜか顔が広くて情報通だ。
初対面で陽茉莉のことをマリだと勘違いしたのがきっかけで、そのままマリと呼んでいる。
〇学校・体育館
全校生徒がきれいに並ぶ。
先生③「じゃあ、新しい生徒会から新入生へあいさつ」
ずらっと並ぶ先輩たちが、次々にあいさつを始める。
先生③「次、新副会長、どうぞ」
副会長の名前が呼ばれると、上級生が悲鳴に近い声を上げる。
1年生たちは戸惑いながらその様子を眺める。
礼央「ご紹介にあずかりました、新生徒会副会長の白河礼央です」
マイクを持ってあいさつを始めた副会長は、いわゆる好青年風のイケメン。
話を聞いていると社交的で明るい雰囲気が伝わってくる。
礼央「新入生のみんな、入学おめでとう。俺たちが楽しい学校生活を保障するからね」
上級生のお姉さまたちが黄色い声をあげる。
陽茉莉(確かに、人気あるのがわかるかも)
先生③「では、最後に生徒会長、よろしく」
途端に静かになる体育館。
マイクを握ったのは眼鏡をかけた真面目風なイケメン。
夏蓮「このたび新生徒会長となりました、八神夏蓮です。去年までとはまったく違う学校生活を約束します」
副会長とは違い、背筋が伸びてまっすぐにこちらを見ている。
夏蓮「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。新生活にはもう慣れたでしょうか。戸惑うことも多いかと思いますが、頼りになる先輩たちがたくさんいるので、安心してください」
陽茉莉(わー真面目ぇ)
夏蓮「さっそくですが、夏休み前に文化祭を予定しております。各クラス2名ほど、実行委員を選出してください。まずは文化祭、楽しみましょう」
会長の言葉に、先輩たちがわぁっと声を上げる。
夏蓮「それではこれから一年、よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げる会長に、割れんばかりの拍手が浴びせられる。
1年生たちもつられて拍手をする。
〇学校・教室
教室へ戻ってきたクラスメイトたち。
授業までの少しの間、友達同士で話している。
沙夜「文化祭、楽しみだねー」
陽茉莉「なにやるんだろう」
沙夜「去年までは、各教室展示みたいなものばかりだったらしいよ」
陽茉莉「そうなの?」
陽茉莉(ほんとになんでも知ってるなぁ)
沙夜「だからね、今年は会長がどんな文化祭をやるか楽しみなんだよー」
陽茉莉「なるほどね」
陽茉莉は先ほど受け取ったプリントをもう一度眺め、会長の欄を読む。
『生徒会長:八神夏蓮。女のような名前だけど男です。新入生のみんなに楽しい学校だと思ってもらえるようにがんばります。優しい先輩方ばかりなので、遠慮しないで学校生活楽しんでくださいね』
少し右に傾いた、きれいな字。
沙夜が陽茉莉の視線を追って少し笑う。
沙夜「ほんと、会長って真面目だよねぇ。それでイケメン。人気でないわけないわ」
陽茉莉「副会長とは正反対な感じだったね」
沙夜「だよね。でもあの二人、仲いいらしいよ」
陽茉莉「そうなの?」
始業のベルが鳴り、先生②が入ってくる。
〇学校・図書室(放課後)
先生①「楠さん、今日は早めに帰るのよ」
陽茉莉「はぁい、わかってまーす」
陽茉莉はもう先生とは顔なじみになってしまった。
陽茉莉は本を閉じ、早々に図書室を出た。
〇学校・校庭
昨日のように校庭へ出た陽茉莉は、そこで気づく。
陽茉莉(そうだ、昨日の紙ひこうきの文字と似てるんだ)
陽茉莉は駆け足で家へと帰る。
〇自宅・陽茉莉の部屋(夕方)
家に帰り、まっすぐに自分の部屋へ向かう陽茉莉。
机の上に置きっぱなしだった紙ひこうきを丁寧に開く。
『いつの間にか雨は止んでいた
空で太陽が笑ってた
“ほらね 大丈夫だった”
きみの声が聞こえて
心がとてもあたたかくなった
きっと明日も晴れる
それを知ってる僕は強いから
明日はもっと優しくなれる
可憐なきみにいつか言いたい
僕の隣で笑ってほしいと』
陽茉莉(今改めて読むと、これラブレターにも読める)
陽茉莉は紙ひこうきを広げたまま、今日もらったプリントを隣に広げた。
文字を見比べる。
陽茉莉(やっぱりこの字、生徒会長の字だ……これ書いたのも、生徒会長なの?)
< 1 / 4 >