私のこと愛しすぎだよ、結多くん。
「あら、電話」
お母さんが忙しく呼び出し音へ向かっていったと同時、こくんっと、お父さんの船もやっと起きた。
「お、こりゃ勝つな八木坂高校」と、縁もゆかりもない高校を一応は応援していたらしい。
「ふふふ、あら~、そうなの~!もう、そんなに褒めても何も出ないわよー?」
ずいぶんと楽しそうなお母さん。
知り合いだった場合は長々と井戸端会議が始まるのだけれど、今日はそれとも違うみたいで。
誰からだろう…?と思っていると、受話器を耳から離したお母さんは私を見つめてくる。
「このみー、クラスのね、水篠 ゆうたくんからよ」
「…ゆいたくん」
「え?ほらほら、ゆうたくんから連絡網だって」
「だからゆいたくんだよ、お母さん」
“ゆうた”くんじゃない。
彼には結多という、素敵な名前があるの。
つい訂正を優先させちゃったけれど、受話器を渡されてから「え…、結多くん…?」と、ようやく理解した私。