私のこと愛しすぎだよ、結多くん。
す、すごい………。
止まる、という概念がない。
会話量が過去イチかもしれない。
小説だったなら、2ページ分くらいをセリフで埋め尽くしちゃってるはずだ。
「谷口くん?ねえ聞こえてる?人見知り発揮して可愛いのなんか天使だけなんだわ。おい返事しろ森口」
「………ぼ、ぼく…、坂口(さかぐち)、なんです…」
「…………」
2学期が始まった初日、6限目の最終授業で行われた席替え。
窓側4列目だった私は、真ん中の2列目に変わってしまって。
結多くんといえば廊下側のいちばんうしろ。
そんな私の隣は、男子のなかでもそこまで目立たず、いつも似たような友達同士とデュフデュフ言っている坂口くん。
「あのっ、ぶ、部活っ、ぼく、部活動がありまして……!」
「えー、なに、部活を優先させる気なのかよ安口くんは。この状況より?はあ!?この状況より!?!?」
「あわわわ…っ」
生徒たちが散らばっていく放課後の教室。
卓球ラケットが入ったケースを抱えて怯える坂口くんは、結多くんの迫りまくる尋問から逃げようと必死だった。