私のこと愛しすぎだよ、結多くん。
「そっち濡れてない?へーき?」
「う、うん…」
ひとつの傘に、ふたり。
肩がぶつかるたびに緊張して、傘の効果でこもった声にも緊張して。
「伊右衛門丸とは?」
「い、いえもんまる…」
「このみちゃんと隣の席の」
定着しちゃったんだ、その名前…。
それだったら森口くんとか、川口くんとかのほうが坂口くんも受け入れてくれそうだ。
「とくに…必要以上は関わらず過ごしてる、かな」
「あれえ?まじでえ?お昼休みちくわ握ってたよね、俺のフランクフルトじゃなく伊右衛門丸のちくわ」
「ひ、拾ってあげただけだよ…?」
「3限のグループワークのときだってさあ、クソ楽しそうに話してたけどねえ。幻覚?まぼろし?俺とうとう見えるようになっちゃった?」
「…あれは、グループワークだからだよ」
「あんね、このみちゃん。グループワークだって授業の一環なんだから、俺以外と楽しく話すなんかご法度なのルール違反なの違法なの許される行いではないの」