私のこと愛しすぎだよ、結多くん。




「……てんし、じゃ、ない」


「天使だよ??なに言っちゃってんのこのみちゃん。やめてよもう、嘘つくの」


「ついてないもん…っ、天使なんかじゃないから…!嘘つきは結多くんだよ……!」



あ、もう、風邪です。

風邪なの、これ。
風邪すぎてね、たぶん風邪すぎるの。


優しくされると逃げたくなるのに、離れられると寂しくなる。


子供みたいだね、私。



「…なら、すっげえ天使にしてあげる」


「え───…、」


「女の子って、男に触られるとマジで可愛くなるんだってね。科学的にもそーいうホルモンが分泌されて」



聞いたことない声。
聞いたことない目と、知らない動きと。

私が伏せて伏せて逃げつづけた顔を、くいっと無理やりにも引き上げられたかと思えば。



「このみ」


「っ、」



近づいてくる。

甘い吐息が乗っかった、結多くんの顔。



「ゆいっ…」



形のいい唇が向かってくる先に、私の唇。



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