私のこと愛しすぎだよ、結多くん。




得意なんだ。
初対面の第一声ってやつ。

これ言うと90%の確率で周りに驚かれては引かれるんだけど、自分でも武器にしている天性のもの。


話してみなきゃ分からない。


勝手なイメージを作って偏見を持つことも持たれることも、俺は嫌いだから。



「……水篠、くん」


「ふはっ、ごめんジョーダ………おっと、呼ばれちゃって逆に困惑の水篠くんです」



あ……、

朝比奈さんの小ぶりなアヒル口、すげー好きかも俺。


もっとこっちを見て欲しいのに、その子は目線を伏せながらもう1度、小さく唇を開いた。



「みずしの、ゆいたくん」



俺の名前は、間違えられやすい。


結多(ゆいた)───、

どんなに「ゆいた」と周りから呼ばれたとしても、初対面の人間は必ずといっていいほど「ゆうた」と間違える。


が、初めて正しく呼ばれて、ふわりと、胸の底がうずくように嬉しかった。


それが、まずのきっかけ。



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