ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
男たちのオセロゲーム/その8
矢島


剣崎のヤツ、一杯誘ったがそそくさと引き揚げやがって

フフフ、今日、酒が入れば荒れ狂うとでも思ったんだろうが…

なにしろ、2代目逃したんだからな

まあ、飲めば建田をぶっ殺したいくらいな気分にはなる

だが、俺もいろいろと考えを積んきたんだよ

県警とか政治家の連中の話、俺とお前はいつも聞いてた

あれは、建田にはない”財産”になったよな

周りは”武闘派”と一括りだが、時代の流れは正面に据えてきたつもりだ

...


俺たち、オヤジがあんなだから、皆、それぞれの”持ち場”に命かけてな

広域の奴らには、一歩も譲らず対峙してきた、終戦からずっとな

夢中だったし、必死だった

とにかく、オヤジは組を守るとか、そんなの無縁な人だったもんな

ただ、”目の前”に向かって牙を剥くことだけを生きがいにした、”獣”のようだった

死んでもおかしくない場面、オレ何回も一緒だったさ

実際は俺が抗争の前面に立って、建田が組の財政を支えた

でもその両輪だけじゃ、あのオヤジを組のトップに収めることはできなかったぞ

明石田の叔父貴が、対外的な調整は常に一手にこなしてくれた

狂気の相馬豹一を最大限に生かせたのは、あの人のおかげだ

これ、みんな軽く考えてねえか…?

...


建田は俺たちが血を流し、その代償を”清算”してる間に、すっかりビジネスマンになっちまった

奴がトップになれば、広域とはいずれ手を結ぶ

と言っても、所詮それは、あっちの傘下に入ることだ

それだけは許せねえ

今日の幹部会では奴、それはないとみんなに誓ってた

叔父貴も、それを保証するとまで言ってくれた

だから、オレはとりあえずは身を引いた

まあ、これは今後起こすアクションには不可欠のアイバイだった

その上で、”とりあえず”だ…、あくまで

野郎の”先”はだいたい察しがつくからな、その時はキッチリやる

...


もっとも俺と剣崎は、他の組が考えも及ばない、”もっと先”を見据えてるしな

ずっと血を流し、体を張ったモンには時々えらい情報が入る

建田のような金儲けしかできない野郎には、決して耳に入らないネタがな…






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